INA（イナ）

第二次世界大戦終戦直後のドイツ、ヘルツォーゲンアウラッハという小さな町で、工業技術者であったWilhelm Schäffler（ヴィルヘルム・シェフラー）とGeorg Schäffler（ゲオルク・シェフラー）の兄弟は、1946年11月30日にIndustrie GmbHを設立しました。戦火で傷ついたドイツ復興の希望を胸に、彼らは精密機械部品の製造を目指しました。これが、後のINAブランドの誕生につながります。

1949年、Georg Schäfflerは画期的な針状ころ軸受用ケージ（needle roller cage）を発明しました。従来の軸受よりも軽量で耐久性に優れ、高速回転に対応できるこの技術は、INA（Industrie Nadellager：工業針状軸受）ブランドの成功の基盤となりました。この発明により、INAは業界のトップランナーへと躍進します。

INAは自動車産業の成長に着目し、エンジン部品の製造に参入します。1958年にはブラジルのサンパウロに工場を開設し、国際展開の第一歩を踏み出しました。高品質な自動車部品の供給により、世界の自動車メーカーからの信頼を獲得していきます。

1980年代から1990年代にかけて、INAはグローバル展開を加速させます。北米、南米、アジアに生産拠点を設立し、世界中の自動車メーカーに高品質な部品を供給する体制を整えました。

1999年、INAはクラッチメーカーのLuK GmbHを完全買収し、製品ラインアップを大幅に拡充しました。続いて2001年には、ドイツの老舗軸受メーカーFAG Kugelfischer Georg Schäfer KGaAを買収。これにより、Schaefflerグループは世界第2位の軸受メーカーへと成長しました。

自動車技術の進化とともに、INAも新たな挑戦を開始します。エンジン部品だけでなく、トランスミッションやシャシー関連部品など、製品ラインアップを拡充。自動車の安全性と快適性を向上させる技術開発に積極的に取り組みます。

現在、INAブランドを含むSchaefflerグループは世界有数の自動車部品メーカーとして、100カ国以上で事業を展開しています。電動化や自動運転といった自動車産業の変革にも積極的に対応し、未来のモビリティ社会を支える技術開発を続けています。